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日常のことを思いつくまま綴ってます。
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友人B

友人Bについて噺てみやうと思う。

私とは違う部署だが、彼は私と同じ流通業の本社に働き
同年代であったこともあり、大の友人だった

ー鍵がないんだよ

唐突な彼の噺に、私はきょとんとして

着火したばかりのジッポの蓋を閉じ

セブンスターを咥えたままの格好で「ん?」と訪ねた。








鍵がないんだよ。マンションの。

武士に二言はないとは言うが

さすがに二度目でも言うのを苛つかせる事だったのだろう。

私は嫌煙家の彼の手前もあり

少しフィルターの湿った不快なタバコを箱の上にちょこっと置き換えると

彼の噺に聞き入った


『鍵がないんだよ、マンションの。で、無いだけならいいんだ。合い鍵を作ればいい。しかしなぁ、

作って鍵をかけて出かけて行っても、帰ったら開いていたり、間違いなく俺じゃないだれかが

ついさっきまで居たような香りっていうかな...。雰囲気がするんだよ』

彼は無表情に

冷静を保つように言った

『家族か誰かじゃねぇか?じゃなきゃ、管理人とか』

私は思いつくことを適当に言った。

違うんだよ


違う


『家族には合い鍵なんて渡してないし、管理人は廊下の掃除をしに来てるだけみたいな

ババアだよ。マスターキーを持ってたって頻繁に人の家の鍵を開けるわけねえだろ』

憤慨して彼は言う。


確かにその通りなのかもしれない。

彼の家族にしたって

ご健在なのは知っていたが

頻繁に遊びに来るような

近隣に住んでいる訳ではない


妙だ

妙なのかもしれない


鍵をかけても

鍵が開いている

もし、家にいたままなら


犯人がわかるのは当然だが

家にいない間に

犯行は行われている


しかし、何か物が盗まれたわけでもなく

むしろ、たまに


サランラップをかけられた

料理が

中央のテーブルにポツンと

置いてあることだったという

しかも決まって



ねこまんま

だ、そうだ


思い当たる節はないのかと

訪ねる。

しかし、ヤツは口をつぐむだけだ。

それ以来食欲もないと言ふ

確かに窶れているし

飲みニケーションしかないか。


仕方がないので

口を割らせるために

夕食にさそった。


私は

さっぱりしたものならどうだと上手いそばを食った

彼は箸を割らなかった

蕎麦アレルギーだった。


洋食ならどうだ!!と私はエビフライを食った

彼はフォークを進めない

甲骨類アレルギーだった。


若者は肉しかない!私は焼き肉屋で神戸牛を食った

彼はトングを掴まない

そうだ、彼は煙が苦手だった。


なら中華しかない

トロトロのフカヒレを。チュルチュルピチャピチャすすった。

彼はレンゲを口に進めない。

しまった。宗教上の理由で。

違うか。ただ気が進まないようだった。


仕方がないので

彼が帰りたくないと言う

家に送っていくことにした。

ビール3杯、焼酎ロック2杯、バーボン1杯、泡盛2杯を2ラウンドした

私は大満足だった。


問題の家の前に立った

さすがに私も気が引けた

と、言うより

明らかに様子の違うBから察し

まるで金縛りにあったようだった

霊だのなんだのは全く信じない私も

さすがに硬直してしまっていた。



鍵は














バンザーイ

バンザーイ

バンザーイ!!


心霊であろうと

不審者であろうと

ストーカーであろうと

警察であろうと

管理人であろうと


原因は何でもいいが

鍵が開いていると言う事実に

負けた


『おい、鍵開いてるな確かに』

私は確認を彼に促した

『いや、今日は違うんだ』


意味深だ



違う

彼の言う

不可解さとは

違うということか


いっこうに動けないでいるBに代わり

『お邪魔しますよ』

誰に言うでもなく

扉を開けた










血まみれの

まるで鬼の形相をした



とはいかず



裸にエプロンを着けた彼の元彼女(いや、言うなれば北斗の拳のケンシロウ)が居た。

気まずそうであった空間を

縫ったのは彼女だった

『あなたの好きな、ねこまんまを作りに来ただけなの』

笑顔なのか

睨んでいるのか

よくわからない

複雑な表情だった。

眉間にシワを寄せながら

ウインクをしていた

やうに思う

『もう、家に来るなといっただろ!!俺らは結ばれない間柄なんだ』

Bは元彼女?を怒鳴りつけた

『ばってん』

変な鉛で彼女は泣き崩れた。

腹の底から低音で泣いた

Bの家の隣を走る道路が揺れているような

地響きとしか言え無い。


『あんたを苦しめるつもりはなかと、もう好きにしたら...よかと。」


言い終えると同時か

私たちの方へ突進

いや、方向は開け放たれている扉だった

彼女は我々の隣を通過する瞬間

Bの右手は元彼女の左腕を掴んでいた









ブチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥx


ポン


便器のつまりをなおす

あの

道具の吸着力のような

接吻


私は異様な光景に

吐き気を押さえられず

トイレに駆け込み

異臭の若干する

便器に向かって

しこたま吐いた

フカヒレ

神戸牛

エビフライ

蕎麦


なにもかもムダになった

『お前への愛が一度も薄れた日は無かった、いかないでくれ愛している』

『あたいも。もう離さない』

更なる接吻

私はもう、吐くものもなく、胃液ですっぱく

涙目になっていた。



なるほど

夫婦喧嘩は犬も食わぬか

しかし、なんで

ケンシロウ(もといBの彼女)は裸にエプロンだったのか

それさえなければ

蕎麦位は

胃におさまっていたかもしれない。

 


『ずっと「そば」に居てくれ』無情なBの声を子守歌に

私は

昇天した。



<終>

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